物語
時は大正末期。奇妙に暑い夏。
主人公である蒲生鉄哉(注・名前変更不可)は、帝都の郊外にある北畠家の屋敷にやって来た。当主である北畠清邦が一月程前に他界し、その残した書類や備忘録の整理の為に一ヶ月間雇われたのだった。
提示された報酬は、苦学生である鉄哉には充分すぎる程充分な額であった。
古色蒼然にして広壮な北畠家の屋敷にて、鉄哉は三人の女達と出逢う。
妖艶な未亡人、未砂緒。
物静かで、どこか冷たい雰囲気の長女、蝶子。
天真爛漫な次女、茉莉絵。
だが、当主たる北畠清邦が他界して後、この屋敷の主人として君臨する詐欺師めいた後見人の中畑伊佐治は、鉄哉に恐るべき事実を告げる。
鉄哉に依頼された本当の仕事は、母娘三人を肉奴隷として、縄で調教することだったのだ……。
伊佐治の脅迫めいた言辞の前に、鉄哉は断ることもならず、おぞましき謎と因縁にとり憑かれた妄念の迷宮へと迷い込み、蛾のごとく捕らわれてしまうのだった。
広壮で薄暗い現実離れした屋敷の中で、三人の女が責め嬲られ上げる声は、苦痛か快楽か? 縄に捕らわれたのは、本当に女達だけなのか? この迷宮から鉄哉は抜け出る事が出来るのか?
それとも迷宮の中にこそ、心の底では求めていた何かがあるのだろうか?
徐々に崩壊し、烏の群だけが数を増していく屋敷に、誰一人予期しない破滅の時が、密やかに近づいている……。
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