『エロゲーとわたし』 連載第十三回

 2000年6月22日。

 十三回目の『エロゲーとわたし』の始まりや。
 いやぁ不吉やなぁ。十三でっせ。十三。おおこわ。
 耶蘇の信者でもないのに、なに言うてんねん、パチキかましたろか? と言うお方もいる思うけど、
そこはそれ、水心あれば魚心。
 よう解らん? 大丈夫、ワイも何言っているか解らん。おあいこや。

 でもな、ほんま今週は、珍しい週やで。
 何がそないに珍しいかと言えば、ワイがエロゲーを買わんというけったいな事が起きそうやからや。
 これが、どれくらい珍しいかっちゅうとやな、通天閣を縦に十段重ねしたくらい珍しい事なんや、なんまんだぶなんまんだぶ。
 てな訳で、六月買うたエロゲーの本数は五本で止まりそうな気配や。会員通販で買うてしまったもんを含めても六本。ほんま珍しい月やなぁ。
 巷では、『空気』っちゅう話題作の発売が、二週間ばかり伸びたらしいゆう話で盛り上がっとるそうやが、ええなぁ、話題になって儲かる所は、眼福眼福。

 ってなトコで、今週の『エロゲーとわたし』に、行ってみまひょか。

 ワイと十八人の女達。なんやええ感じやなぁ。
 酒池肉林でハーレムや。男の本懐ここにありって感じやね。
 もっとも十八人は全員、テキストとアニメ絵の女や。
 『エレクト大戦』で、ワイがシナリオ書いた女の子達や。今でも可愛い思うとる。
みんなエエ子ばっかりや。
 でもなぁ、愛ゆうのは残酷やねん。公平やないねん。公平なのは愛やないねん。
愛は惜しみなく奪う物や。奪われるばっかりやねん・・・思い出すと涙ちょちょぎれるでぇ・・・そないな個人的な事は置いといて、とにかく愛は不公平や。
 十八人の中には、ワイが今まで書いたキャラの中で一等好きなキャラがおる。
今でもテキスト読み返すとなぁ、当時のワイの愛が籠もっとって微笑ましいやら、
こそばゆいやら。なんか幸せな気分になるんや。
 そやけど、光在れば影があるのが世の中のならいっちゅうもんや。十八人の中には、ワイの愛が一滴も入ってないいう可哀想な奴がおるねん。実を言うとな、今でもそいつ嫌いやねん。今まで書いたキャラん中で一等嫌いや。
 奴とは・・・ついに奴呼ばわりや、しかも女の子に対して奴とはまぁ乱暴や。
そやからもてへんのや。でもええねん。いやようない。
もてへんのはようないが、奴を奴と呼ぶのはええねん。あんなん奴でええねん。
 とにかく奴とはハナから馬が合わへんかってん。
キャラ表を一目見た時からソリが合わへんかってん。
名前も覚えとらんが、軽音楽部所属のロック姉ちゃんやったんや。アニメ塗りの赤い髪の毛をトサカみたいにおったてよって、バンダナまで締めおって、ワイへガンを飛ばして来よった。ほんまやで。
 まぁ、そん時は、いつかは奴も理解できるやろ、と高をくくっていたワイが馬鹿やったんや。何度も何度もワイは奴のエロシーンを書こうとしたんやで。
そやけど、このトサカ頭ときたらガンとしてワイと理解し合いとうない言うねん。ワイと理解しあう位なら舌かむでぇ、とまでいいけつかる。生意気な奴や。
 しゃあないから、奴は後回しにして他のエエ子達のエロシーンをぱちぱちと書いてったんや。
実は『エレクト大戦』ちゅうゲームは、面をクリアする順番はプレーヤー任せのゲームで自由度が結構高いんや。で、クリアした面に幽閉されている女の子の洗脳を解くっちゅう理由でHする訳なんや。エロゲーやねぇ。
 ちゅう事は、最初から主人公と一緒に戦っとる三人組み以外のキャラは、エロシーン=そのキャラが初登場するシーンな訳や。OKやね?
 となるとや女の子のキャラ立ては、エロシーンでやらなあかん訳や。
 それどころか、面と面の間のアドベンチャーパートで、どの女子がいるか又はいらんかも、面をクリアしていく順番で変わってくる訳や。
これは何っちゅう事も無く聞こえるか知らんけど、難儀な事なんやで。
 なんでかいうとやなぁ。アドベンチャーパートで会話させる時は、いちいちフラグを見て、おらん女の子が会話に参加せぇへん様にせなならんのや。好き放題べらべら喋らせて、キャラ立て出来んちゅーワケや。
 と、なるとや。安心して会話させられんのは、女の子を全員解放した後やいう事になる訳や。でも18人のキャラをべらべらと喋らせるのは苦労するでぇホンマに。
一人一人のキャラをある程度立てておかんと、誰が話しているのか解らん様になってしまうワケや。下手打つと『ですぅ』『だもん』『うぐぅ』『ござる』等の語尾で区別する以外無くなってしまう訳や。でも語尾も女の子のキャラが立っていて初めてエエ感じになるもんや。語尾だけ違うてると、うざいだけや。
 で、エロシーンや。
 さっきも言った通り『エレクト大戦』では、エロシーン=初登場シーンな訳や。
つまり、ここでは思いっきりキャラを立てた会話が出来る訳や。というか大部分のキャラにとってはエロシーンだけが、フラグを気にせずキャラ立てが可能なシーンな訳や。ここでキャラが立たんと、おしまいっちゅう訳や。
 そう言うワケやから、ワイはエロシーン頑張ったねん。自分で言うのもなんやが、結構旨くいった様な気がするんや。うひょー書いていて恥ずかしいやっちゃ、と後頭部へ回し蹴りでも噛ましてやりたい気分やが、そう思うんやからしょうかた無いやろ? でも、時間が掛かってしもうてなぁ・・・ああ堪忍や。
 更に悪い事に、なんせ初めてやから、文章は誤字脱字の嵐、まるで誤字ラという感じの破壊力やった。それやから、田所はんと、もうおひとかたの偉い人が、ワイがテキストをあげる端から誤字脱字や行きすぎた表現を、バシバシと修正してくれたんやで、ほんまに、天竺へお経を取りにいく様なありがたさや。
 そんな過分なまでに助けて貰ったんやけど、なんせ初めての仕事や。初めての仕事ならなんでもええんかい、と言う突っ込みは耳が痛いんやけど、初めてなんやもん、あんまり痛くせぇへんといて。・・・ワイ自分で書いてて気分悪ぅなってきたわ。そう言うセリフはなぁ、美少女がいうもんや。美少女が。
 まぁそれは置いといてや、とにかく唸って転がってちいとも進まん。キーボード打たな進まへんのは当たり前や。ついに締め切りもヤバイっちゅう有様や。モカも効かなくなって来たんや。モカは不味いでぇ。
 それを見るに見かねた田所社長が、自分の伝手を使って、助っ人シナリオライターを召還してくれたんや。有難い事やなぁ。涙ちょちょぎれるわぁ。余程魔法陣が良く描けてたんやろう。極上のシナリオライターやった。名前を聞いたら知っとる人は知っとるやろうし、知らん言うイケズなお人も、代表作の名前を聞いたら、思わず『きゃるーん』と言ってしまうやもしれん偉い人や。
 なんと十八人中の五人か四人を、その偉い人に書いて貰う事になったんや。誰を書いて貰いまひょうか、とワイは考えたんや。勿論、手こずりそうな女を書いて貰うっちゅうのが当然や。あのトサカ頭と手を切るええチャンスやった。
 だがワイは意地になっとったんやなぁ。これだけ何度もトサカ頭に挑戦したんや、今更、他人に渡せるもんやない!! 奴はワイが倒すんやぁ、っちゅう間違った燃え上がり方をしてしまったんや。いやぁアホやでぇ。ほんまアホや。
 でもなぁ、ワイは直ぐに後悔したんや。奴は難攻不落やねん。ほんま固いやっちゃぁ、アイアンメィデンの称号をやりたいくらいや。挑戦して挫折する度に、メインのシナリオや、他の可愛いエエ子のシナリオを進めると言う難問は迂回して取り敢えず目の前の事を片づけるっちゅう、どっかの政府みたいな事をしてたワケや。いつのまにか赤字が六百五十兆ちゅうワケやね。ワイ、社会派やん。
 で、そうこうしとる内に、助っ人はんからエロシーンが届いたんや。一読して笑ってから困ったねん。面白いんや確かに。でもなぁ、主人公のち○ぽ臭くて汚なそーに書いてあるねん。そういうネタでギャグが展開されてるねん。ワイ実は風呂好きでなぁ。誤解が無いように言っておくと一人で風呂に入るのが好きやねん。寂しい男やなぁ、と言わんといてぇな。なんや哀しい色やねん。まぁ、そないなワケやから、ワイの書く主人公も大抵身綺麗になるワケや。風呂に入るのが嫌いじゃ無い奴とデフォルトで設定してしまうねん。そう言うワケやから、他のエロシーンと違和感バリバリ伝説やった。・・・なんや寒いなぁ。
 エロシーンでち○ぽ臭い、あやしの匂いやぁ、この匂いがなまらんなぁ、ってな類のギャグは、実は当時良くあったんや。だから助っ人はんに落ち度はあらへん。勝手に風呂好きと思い込んで説明もせんかったワイが悪いんや。すんまへん、堪忍しとくれやす、と心の中で拝みながら、あちこち書き直させて貰ったんや。
今読み返しても、明らかに文章の味が他のキャラとかなり違ってて、やはり、すんまへんと思ってしまうのや。後悔先立たずとは名言や。
 で、ついに恐るべき事態がやって来たんや。ヒロインと天使は、メインシナリオ中にエロシーンがあるんで、まだ書く必要が無かったんやが、それ以外のエロシーンは早々に完成させなアカン、ちゅう事になったんや。
 残るは二人やった。対照的な二人組やった。
 一人は、書きたくて書きたくてたまらない一番のお気に入りやった。余りにも気に入っていたんで最後までとっといたんやね。『美平美津子』っちゅう釣り研究会の女の子やったぁ。自分で書いていて言うのもなんやがエエ子やでぇ、結構Hなんやけど、そこがまた宜しいワケや。自分で書いたキャラ中で一二を争う程好きなキャラだったりするんやね。こういうキャラをもっと長くじっくり書いてみたいもんや。チャンスがあればいつかワイは書くでぇ。
 で、もう一人が奴やったんや。これだけ嫌いやったら、実は愛の裏返しとでも、思いたい所やが、奴とワイの間にそんなもんは水素原子ほどもあらへんかった。
言うなれば天国と地獄や。先に好きな物を食べて後に不味い物に挑戦するか、其れとも、不味い物を水で呑み込むように食べて後に好きな物を賞味するか?
 ワイは思ったんや。ここで奴を後回しにしたら人生負けや。ベタ降りの土砂降りや。津軽海峡冬景色や。負けるわけにはいかん。勝つしかないんや。
 その瞬間、奴は理解の対象なんかや無かった。完全な敵になったんや。ワイ、敵と思ってキャラを書いたのは後にも先にも奴だけや。敵や思おたら、なんや簡単に書けたんや。なんであないに書けんかったか解らんと言うくらいあっさりやった。宿便でも出たようにスッキリさっぱりやった。でも二度と読み返しとう無かったやね。
 書き上げた奴のテキストを読んだ田所社長が、不思議そうな顔をしてワイに言ったもんや。
「まるちゃん・・・全く愛がないテキストだね・・・」
 そうなんや。全く愛が無いテキストやったんや。愛のない勝利やったんや。虚しいやなぁ。もう二度とあんな風にテキストは打ちたくないもんや。
 対照的に最後に書いた『美平美津子』のテキストは、舐めるように丁寧に書いたもんや。書くのが楽しゅうて楽しゅうて、たまらなかったもんや。キャラ立てとかセリフとか一等旨くいっとる上に、演出も一番凝ってるんや。ほんまに愛は不公平やなぁ。愛は残酷やねん。
 これで、今読み返して、奴のテキストの方が出来が良いねん、とかやと、この話にも寓話的な深みが加わるんやけど。やっぱり所詮奴は奴やった。

 やっぱ愛は不公平やなぁ。しかもその不公平な愛まで無いんやから。哀しい話や。なんや嘘関西人の癖にしめっぽくなってしもうた。堪忍やぁ。堪忍やぁ。

 ほな、そう言うワケで今週はおしまいや。

BY ストーンヘッズシナリオライター まるちゃん改め丸谷秀人でした。

PS              次回予告!!
            会社中を睡眠不足に巻き込み、

        ついに『スーパーエレクト大戦SEX』はUPする。

           UP二日前!! なぜまだテキスト?
               をお楽しみに。

                来週も見てね。

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