2000年7月19日。
皆様暑い中いかがお過ごしでしょうか、ありおりはべりいまそかり。
先週は精神の余裕が無くて、わぁぁぁパニック!! と言う感じで、モニターの前に座ったものの何も書けなかったのです。
全国に4名は確実に存在する愛読者の皆様すいませんでした。
今日も逃げてしまおうかと思ったのですが、ここで逃げたら隔週連載どころか月刊連載、いや季刊連載にまで堕落しかねません。それではいけない。と無い力を振り絞って出てきて参りました。知力体力時の運。
今週は、大宇宙を無敵の宇宙船で駆け回る大魔王の話と、調教される正義の味方の話を買うつもりです。嗚呼、エロゲーって素敵です。正義の味方を非道い目に会わせるのは浪漫です。正義なんて恥ずかしげもなく叫ぶ奴は、何かを見ようとしない困った人間だと確信している僕が買わずに誰が買う。
ただ、気に掛かるのは、面白いゲームかどうかと言う疑問だけ。 と言うわけで、第十五回目の『エロゲーとわたし』SHOW TIME!!
降って湧いた『エレクト大戦』の仕事に掛かる少し前の事。
僕は社長に呼び出しをくらったのです。
なぬ呼び出し!? 僕の心臓は、ばくん、と音を立てて飛び上がる。上司になんて呼ばれるのはロクな事が無いものです。前の会社でもそうだったのです。そう言う時は逃げたいが、勿論逃げるわけにはいかないのです。
悪い予感に怯えながら僅か十メートル余りの距離を歩いて、社長室に入ると、なんの事は無い『SEX2』についてのお話だったのです。大きく溜息を吐く僕。
被害妄想も此処まで来るといと哀れを催す。
既に、この時点で『SEX2』がやりまくり、HCG100パーセントのゲームという事は決まっていたのです。
隣の花屋のお姉さんであり、幼い時から憧れの的であった『柊綾香』さんと大願成就の末に身も心も結ばれた主人公(通称ももちゃん)。
愛し合う二人のすることは、ただひとつ!! 毎日SEX!!
と言う身も蓋もなくシンプル・伊豆・ベストな話なのです。
『SEX2』がこういう話だと言う事は、世界創造の瞬間から決まっていたです。と言うのは流石に大袈裟ですが、クライアントから発注が来た段階から決まっていたというのは本当です。
そう、『SEX2』は『エレクト大戦』と同じく外注仕事だったのです。
クライアントは大阪のエロゲーブランド『アーヴォリオ』、注文はシナリオ。
『SEX2』当時の私は、外注で給料を貰う男と呼ばれていたのです。
『SEX2』と言うからには当然『SEX』と言う前編があるのです。
『SEX』は、ゲーム開始時に3人の女の子の内の一人を選んで、次は、いきなりエロシーンに突入!! その後は、どんなSEXするかをコマンドで選んで行くだけと言う単刀直入なアドベンチャーゲームだったのです。この頃はやりの女の子、シナリオ重視、涙ちょちょ切れてじーんとしたいユーザーからは路傍の石の様に黙殺される類のゲームです。
なんの因果か、このゲームのシナリオを書いたのは誰あろう田所社長その人だったのです。どんどんぱふぱふ。
更に『SEX2』には、もう一つ前編があるのです。やはりアーヴォリオから出ていた、『サティア』と言うゲームです。
『サティア』は花を育てるゲームで、うまく育てると花の精とHが出来て、最後には、隣の花屋の一人娘で少し年上の『柊綾香』さんとラブラブになってHが出来るというゲームなのです。とにかく、大切なのは可愛い女の子とのH、それ以外には意味なんて無いんだというエロゲーの真実が露骨に現れているゲームなのです。
当時このゲームの小説版が『パソパラチャット』と言う雑誌に掲載されたのですが、これを書いたのも、なんとびっくり田所社長だったのです。人の因果の不思議さよ。
ぶっちゃけた話、当時、社長は前の会社をやめたばかりだったので、以前から知り合いだったアーヴォリオの偉い人が仕事をくれたと言う事らしいです。
両者の続編たる『SEX2』は、シナリオ的には『サティア』の続編、コンセプトは『SEX』の続編と言うハイブリッドな子供だったのです。
後年、私がシナリオを書いた『MAID iN HEAVEN』のなぎさを、綾香さんに変えて、CG枚数を三分の一弱にすればゲームのイメージとして正しいと思います。
『SEX2』は原画もこの時点で既に決定済み。
『SEX』『サティア』と同じく、当時人気があった原画家『きゃろらいんようこ』さん。あのムチッとした絵は僕も好きだったのです。何故、全ては過去になり、時と共に何かが喪われてしまうのでしょう。哀しいことです。
さようなら『きゃろらいんようこ』さん、素敵な原画をありがとう。
さて、ここまで決まっていて今更何を話し合うと言うのかと、疑問に思いお嘆きの方もおられるでしょう。そんな方には辛口の菊正宗。
実はこの時点で『SEX2』の企画書と言う物が無かったのです。
だから早急に作ってしまわねばならなかったのです。既に殆ど内容が決まっているゲームの企画書を作る為の会議という、まるでビルを上から建てていくみたいです。結構この業界いい加減です。
話し合いが始まってすぐ、僕は何とは無しに言ったのです。
「結局。愛があれば何をしてもいいんですよ」
その瞬間、社長の顔に満面の笑みが浮かんだのです。
「そうだ!! それそれ!! それだよ、まるちゃん!!」
「それですか・・・?」(一体何がそれなんだろう)
「愛があれば何をしてもいい!! これで企画書に書くコンセプトは決定だ」
まぁ、何ともはや棚からぼた餅、ヒョウタンから駒。これで話し合いは、ほぼ終わり、後は実務的な事の伝達だけ。
原画枚数は75枚。ゲストキャラは3名。おしまい。
こうして僅か15分で、企画会議は終わったのです。
以下、『SEX2』のオープニングより。
愛があれば。
毎日。
SEXしてもいいのだ!!
海でも山でも湖でもベンチでも大通りでも道ばたでも
デパートでもトイレでも台所でも演習地でも月面でも
キャンプでも戦場でも野原でも駐車場でも平均台でも
夜でも昼でも朝でも会社でも教壇の上でも体育館でも
アフリカでもアマゾンでも南極でも北極でも木星でも
滑り台でもお立ち台でもランチタイムでもおやつでも
京都タワーでも東京タワーでもツンドラでも大分でも
歯磨きの前でも後でも寝むる前でも後でも食事中でも
水中で熔鉱炉で真空で零下10度で牢屋で空中浮遊で
嵐の晩に小舟の上で真夜中の富士の樹海で結婚式場で
ハチ公前で天安門広場でホワイトハウスで大仏の上で
パジャマでセーラー服で裸でエプロンで繃帯だらけで
前から後ろから横から縦から斜めから激しくせつなく
ゆっくりとがんがんとびしょびしょにびちゃびちゃに
とろけてはじけて立って立たせてかじってしゃぶって
なめてねぶってもんでにぎってとろとろに抱きしめて
コンセプトのまんまですね。
今も昔も僕は安直で、困った物です。
この部分を一気呵成に書き上げて、さて本編に突入と思った所で、『エレクト大戦』が始まったんですね。
BY ストーンヘッズシナリオライター まるちゃん改め丸谷秀人でした。
PS さーて来週の『エロゲーとわたし』は?
夏です。
『愛』ってなんなんでしょう?
ラブラブのカップルの放射する。
あの独特の暑苦しさ。
秋葉原を行き交う人達とはまた違う暑苦しさ。
いかにそれをテキスト上に再現すべきか?
愛について考え続け。
人は彷徨い朽ち果てていく。
ああ、愛ってなんなんでしょう?
その時、猫田さんから渡された一冊の漫画。
そこには、
暑苦しい愛がぎっちりと詰まっていたのでした。
そんな訳で来週も見てくださいね。
|