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● 『仏蘭西少女開発回想録』 第16回

みなさまこんにちは。
ストーンヘッズディレクターの三ツ矢新です。

夏コミは終わりましたが、夏はまだ終わりません。
当たり前ですね。

この時期、夏の終わりになると、ちょっとした寂しさを覚えます。
だいたい昼間、外を歩いてると、ふとした隙にそういう気分になります。

あれは何なんでしょうね。
小中学生の頃の夏休みの終わりの気分を思い出しちゃうんですかね。

最近は公私ともども、取り立てて夏ならでは! という出来事は無いのに関わらず
こういう終わりの寂しさだけ感じてしまうのは、不公平だなと思いますが、
でもくやしい感じちゃうぅっ! ビクンビクン!!
……って感じです。

ということを書きながら思いつきましたが、
射精してないのに賢者タイムが来ちゃうとか、そういうのに近いかもしれないですね。
この「なんだよソレ!?」っていうやり場の無い気持ちは。

※賢者タイムとは、出した後の虚脱感の中で、とても穏やかな気分になって、
 寝タバコしながらダルそうに振り返って「あれ、まだいたの?」とか言っちゃう、
 そういうタイムのことです。

というわけで、そんな世の不条理を儚みつつ、さっそく今週も行ってみましょう。

<仏蘭西少女開発回想録 第16回>

慣れないWebラジオをこなしながら、
『皇涼子のBitchな1日』も何とかマスターアップした頃には、
2008年も残すところあと1ヶ月になっていました。

そして、ストーンヘッズはこの年の冬コミにも出てたんですね。
一体どうやってこのスケジュールの中で冬コミに出展できたのか、
ちょっと思い出せないですが、人間やれば出来るものですね。

思い出せるのは、Webラジオの公開録音をやって、
そこで『仏蘭西少女』のキャスティングを発表したことくらいでしょうか。

『皇涼子〜』がマスターアップした1〜2週間後には、
もう『仏蘭西少女』の音声収録は始まってました。

6MB超という、通常のゲームの3倍近いシナリオボリュームのゲームなので、
当然その分台詞数も多く、少女、香純、舞子等の主要キャラクターは、
声優さんのスケジュール確保の難しさも相まって、
このタイミングから撮り始めないと間に合わない状況でした。
(結局、年内から始まった音声収録は翌年の4月くらいまで断続的に続くことになります)

2008年の12月の段階で、この後やらなければならない、
ボリュームの大きな作業は概ね以下の通りです。

  • シナリオフローチャートのチェック
  • ルビや改行指定などのテキスト制御のスクリプト
  • 立ち絵や背景表示、イベントCGの指定やBGM・SE指定などの
    演出スクリプト
  • 音声収録と、音声チェック
簡単に解説すると、『皇涼子〜』が終わるまでは、
『仏蘭西少女』を形にするための素材集めが主な仕事でしたが、
その集まりつつあった素材を実際ゲームで動くところまで持って行く作業が
丸残りの状態だったわけです。

この中で「ルビや改行指定などのテキスト制御のスクリプト」
の作業はちょっと特殊というか、『仏蘭西少女』ならではの作業でした。

『仏蘭西少女』は雰囲気作りのために、
当て字や普段お目にかからない漢字を多様していたので、
(これは同系の前作『女郎蜘蛛』でもやりましたが)
シナリオ中にルビを振る必要がありました。

このルビはある程度は機械的に、プログラムで一括して入れられるのですが、
当然同じ漢字でも読みが異なるケースなどありますので完璧にはできません。
結局のところ、人力で指定・チェックする箇所が多くなります。

それに加え今回は、
  • 文章を画面いっぱいに表示するノベルモード
  • メッセージウィンドウ内に文章を表示するアドベンチャーモード
の2つのゲームシステムを選べる仕様になっていたので、
同じ文章を表示させるにしても、二通りの指定をしなければなりません。

『SEXFRIEND』や『SweetHome』のようなオーソドックスなアドベンチャーゲームでは、
割とこのテキスト表示の過程はすんなり終わって、
その後の演出スクリプトに主に時間が取られるわけですが、
『仏蘭西少女』では、その段階に持って行くまでもうひと手間かかったわけですね。

それでいて、さらにボリュームが通常の3倍……

これはもう、スタッフを増員して人海戦術で乗り切るしかない、と思ってはいましたが、
始める前から相当の消耗戦が予想され、もう終わった今でさえ、
その時の状況を思い出すと、眉間にシワが寄って、難しい顔つきになってしまいます。

そんな状況下では、長丁場の音声収録も、
ある意味気分転換にはなっていたような気がします。

音声収録現場では、取り漏らしや演技の微調整のために、
演技と台本に集中せざるを得ない状況なので、
他の余計なこと考えなくて済むんですね。

ただ一方で、あまりにNGテイクが少ない場合などは、
やや手持ち無沙汰になってしまうこともありますが……

余談ですが、こういう時ほど、後になって
「なんでこれあれだけ人が居て誰も気づかなかったの!?」
という収録ミス(簡単な漢字のいい間違い等)が出てくる、
魔空間が生まれやすくもあります。

年が明けての2009年1〜2月は、そんな音声収録が最も多かった時期で、
週の半分くらいは音声収録スタジオに行っていました。

収録現場での出来事は、
Webラジオの『中目黒わくわくモンキーパーク』でも結構喋りましたが、
蔡子才や執事など、ラジオであまり話題に上らなかったキャラクターも
居ますので、次回はその辺りの話を書こうかと思います。

<続く>

『仏蘭西少女』の開発に関して聞いてみたいことがあれば、
下記のメールアドレスまでメールして下さい。

france_info@franceshojo.com


2010/08/27

● 丸谷秀人のつぶやき千里・第31回


『キャラクターとわたし その2』
 
 みなさんいかがお過ごしでしょうか。年に2回、いつも世間の荒波にびくびくして
『これが最後かも……』の末期な気分でコミケ会場へ繰り出す不出世のエロゲシナリ
オライター丸谷です。会場で飲んだ冷たい伊右衛門、おいしゅうございました。
 
 まぁそんなこんなでキャラクターとのつきあい方の話でしたっけ?
 
 さて、こうしてキャラクター様達との旅が始まる訳です(いきなり『さて』で始
まった事にポカンとしている方は、先月号『丸谷秀人のつぶやき千里・第30回
を読んでください。いや強制じゃありませんよ。ここで読むのをやめた方が賢者の道
でしょう)。
 旅の初めはオープニング、と行きたい所ですが、旅に出る時は微笑みを、まずは地
図を用意しなくちゃいけません。いわゆるプロットという奴です。私はいきあたりば
ったりの計画性皆無の男ですがプロットは書きます。いつでも最初から書き始めて最
後まで書きます。最後の方のシーンが浮かぶ事があっても、どうやってそこへ持って
行くかという計算はしません、いや、出来ないのです。だから、『このシーンを効果
的にする為には、こういう展開で』とか逆算では考えられません。『どうもこんな感
じのシーンが最後の方に来るらしいんだけど、どうやったらここに繋がるんだ?』と
首をひねりながら書き続け『おー、こう繋がったのか! 繋がってよかったぁ』とい
う綱渡りです。綱渡りがいやなら逆算で書けばいいじゃないか、と言う方がいらっし
ゃるかもしれませんが、非才な私には書けないのです。
 プロットを書き始める時にあるのは、世界観とキャラクターです。そして各キャラ
クターはそのキャラクターに固有の行動傾向と解決すべき問題(サブキャラには問題
が設定されていない場合もありますが)を持っています。行動傾向と世界観はどう問
題に向き合うかを規定します。となれば、彼ら彼女らにとらせる事が出来る行動は、
この3つの要素によって限定されます。彼ら彼女らが行動する度に世界もその行動に
よって変化して行きます。変化した世界は、当然、キャラクター達の行動に影響を与
えます。こうしてプロットは進行していくのです。この相互作用をチェックしながら
でないと、私はプロットを書けないのです。だから途中からいきなりとか、最後から
逆算というのが無理なのです。そんなわけで大抵の場合、ラストがどうなるかは判ら
ないで書き始めます。しかもプロットが書き終わっても、エピローグ周りなんかは出
来ていません。実際にテキストを書いて、そこまで到達して判る……そんな感じです。
これは、まだ、キャラクターがよちよち歩きだということと、シナリオ中の出来事を
通過したキャラクターが、最初とどう変わっているか判らないからなのでしょう。
 
 さて、私はPILだけじゃなくてあちこちのブランドでシナリオを書くわけですが
当然、各ブランドで要求されるモノは違います。どこかでそれを勘定にいれなくちゃ
いけません。プロット作成はブランドカラーを勘定に入れる場所でもあるのです。こ
う書くとブランドカラーを凄く意識してやってるみたいですが、実際のところ全然意
識してません。私にとって『ゆのはな』と『仏蘭西少女』はプロットを立てる上で何
の違いもありませんでした(もちろん、期間とかそういうのは違いましたが)。せい
ぜい1キャラ1エンドしか書かないか、エンディング多数を書くか、くらいです。1
キャラ1エンドしか書かないゲームは、大抵、いわゆるハッピーエンドになります
(いわゆるというのはゲームの世界観的にハッピーというくらいの意味です)。
 こう書くと、1キャラ1エンドしか書かなかったシナリオでは、プロット段階であ
った多数のエンドを削除してハッピーエンドだけを生かしてるみたいですが、実際は
違います。『スーパーエレクト大戦・SEX』『ゆのはな』『ティンクルくるせいだ
ーす』『遙かに仰ぎ、麗しの』『しろくまベルスターズ』等のどれもがプロット段階
で既に1キャラに1個ずつしかエンディングはありませんでした(例外が1キャラい
ますが、それとて2個エンドがあっただけでした。あと『エレクト大戦』は基本的に
1つしかエンディングがありません)。エンディングを多数書いたシナリオがハッピ
ーエンド以外も生かしてる、というわけでもありません。つまり『女郎蜘蛛』『SE
XFRIEND』『仏蘭西少女』等では、1キャラ1エンドの1エンドにあたるエン
ドは無いのです。全てが1キャラ1エンドのシナリオのエンドと等価値なのです。
 ちなみに『SEX2』『MAID iN HEAVEN』の2本はエンディングの
性質が他のものと大幅に違うので例外です。
 
 なぜ、こんなにも出来上がりの印象が違うのに、プロットを書いている感覚が変わ
らないのかは、正直、自分でも判りません。もしかしたら、『如何にして設定された
問題を解決するか』しか考えてないからかもしれません。
 
 さて、こうしてプロットが最初から最後の直前くらいまでできあがりました。よう
やくオープニングを書く段階がやって参りました。ここでようやっと旅の終わりまで
続く街道に踏み出したという感じです。なんせ、ここまでの段階とこれからの段階で
は書くテキスト量が大幅に違います。プロットは長くてもせいぜい100Kですが、
本編シナリオは最近は最低でも500K〜1M、長いと5Mを越えたりするのですか
ら。それに、本格的にキャラクター様と歩き出すのもここからです。未踏の荒野へ踏
み出す覚悟を決めねばなりません。
 オープニングは重要です。その重要さと言ったら、これが出来るか出来ないかで、
シナリオが書けるか書けないかが決まる程です。他のもっと有能な方々(まぁ大抵の
シナリオライターは私より有能ですが)はどうか知りませんが、少なくとも私はそう
です。これまでの仕込みがうまくいって、どんな状況にキャラクター様達を放り込ん
でも彼ら彼女らがナチュラルに会話してくれる段階に至っていれば、何も問題なく書
ける筈です。そしてオープニングさえ書ければ概ね何とかなるモノです。卑しい私め
では直視出来ない程偉いディレクター様の指示で、書き上がったオープニングを丸ご
と書き直した事も2回ほどありましたが、今までの経験則からいって、一度書けさえ
すれば書き直しは簡単です。
 まぁ『昔は凶悪犯罪なんて無くていい世の中だった。それに引き替え今は……』的
な中高年の何の根拠もない繰り言と同じように過去は美化されているモノですから、
私も苦しみぬいたオープニング作業の記憶を忘れている可能性は多々ありますが。忘
却とは忘れ去ることなり。
 
 というわけで、キャラクター様達との旅は、ようやくプロットという準備段階を終
え、オープニングからエンディングへいたる探検へ踏み出す所まで来ました。
 これから先はまた長いので、今回はこの辺でおしまいにしたいと思います。

2010/08/20

● 『仏蘭西少女開発回想録』 第15.5回

みなさまこんにちは。

ストーンヘッズディレクターの三ツ矢新です。

8月に入り夏真っ盛りですね。
そろそろこの暑さに飽きてきました。

まあ、季節ならではの楽しみというのもあるんでしょうが、
そんなものはフィクションで十分な気になって来ますね。

現実はねえ……汗くさくなるし、ベタつく感じもするし、
そういうのに一つ一つ対処していくのが面倒だし、
やんなっちゃいますね。

その点ねえ、ゲームはいいですねえ。
季節感のいいとこ取り出来ますからね。
飽きてきたらすぐやめられるし……

という当たり障りの無い文章を今僕は泣きながら書いてます。
……というのも、実は2回目なんです、原稿書くの。

つい10分前にはあったんですよおおおおおおおおおおおおおおおお、
みっしり書いた『仏蘭西少女回想録』第16回があああああああああああああああああ!!

いやまあ、初歩的な操作ミスなんですけどね……
1年に1回あるか無いかのね……

うっうっうっうっうっうっうっうっ……
泣いていてもはじまらないので書きます。

今回は15.5回でちょっと短いです。ごめんなさいごめんなさい。
気力が回復したらもう1回ちゃんと書きます。

<『仏蘭西少女開発回想録』第15.5回 2008.8〜2008.11>

今回は『仏蘭西少女』とは直接関係の無い、
Webラジオ『中目黒わくわくモンキーパーク』の話です。

Webラジオをやってみよう! っていうかやる!
という勢いのまま、SuperSweepさんとの話は瞬く間に進み、
話が出てきてから僅か2ヶ月足らずで、第0回の配信の運びとなりました。

聴いていただいた方はご存じでしょうが、
メインパーソナリティは声優の民安ともえさんと僕です。

「素人の男がやって大丈夫かぁ〜?」
と我ながら思いましたが、最初に浮かんだラジオでやってみたいことの一つに、
「エロゲーの開発事情をもうちょっと生々しく伝えられないものか?」
というものがあったのと、僕が出ることで予算的に都合が良いこともあったので決めました。

今だともうちょっと熟慮するような気もするんですが、
当時はもう何もかも勢いで即決! みたいな雰囲気でしたね。

今聞き直してみると最初の方はやはりというか当然というか、
僕の喋りはかなり素人っぽくて
(まあ今でもそうなんですが、途中からある程度慣れてきて
 比較的マシになった感触はありました)
民安さんに助けられっぱなしですね……いやもう民安さんには頭が上がりません。

どうして民安さんにパーソナリティを頼んだのか?
というのは、まあトークが面白い人だ、というのは当然そうなんですが、
まだラジオを始めるにあたって参考に他のwebラジオを聞き漁る前から
頼んでみたいな〜、というイメージはあったんですね。

そのイメージはどこから来たかといいますと、
民安さんとはそれまで『SweetHome』の主題歌収録の時に1回会ったきりだったんですが、
もうその時からオーラ出てましたからね「あ、この人は面白そうな人だ」っていう。

そういうイメージがあって、
参考で聞いたラジオでも民安さんが出てるものもあり、それがまた一々面白いんですね。

その一方で、同時進行で進めていた、
『皇涼子のBitchな1日』と『仏蘭西少女』のキャスト表の中にも民安さんの名前が!
キャスティングにせよ、パーソナリティにせよ、それぞれのイメージ重視で選んでいるので、
偶然と言えば偶然なんです。
ただ「この偶然は何かのお導きに違いない!」という感じはありました。

そんなわけで当時も今も多忙な方ですが、
何とかスケジュールを取ってもらって、
『中目黒わくわくモンキーパーク』は無事あの形で配信の運びになったわけです。

自分の喋りの出来はひとまず置いておいて、
ちょっと時間が経った今振り返ってみると、
やっぱり最初のコンセプトというか「ストーンヘッズのwebラジオならこうじゃないの?」
という部分はある程度出せたかな? という手ごたえはありますが、
実際に聞いていただいたリスナーの方々はいかがでしたでしょうか?

ラジオの制作自体は、ゲーム制作にないレスポンスの速さが新鮮で楽しかったので、
また機会があればやってみたいな、とは思ってます。

<続く>

『仏蘭西少女』の開発に関して聞いてみたいことがあれば、
下記のメールアドレスまでメールして下さい。

france_info@franceshojo.com

2010/08/06

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