● 丸谷秀人のつぶやき千里・第77回
暑い。 この夏は暑すぎるのじゃ。 暑いと言ったら暑いのです。気温が高いといいましょう。 とか言う人がいるが、暑いもんは暑いんじゃ! 当然、冷房かけまくりなのじゃ。 電気代が10パーセントも多くかかってしまっているのじゃ。 ところが我が仕事部屋は冷房をかけても暑いんじゃ。 窓の前にはUV反射機能をもったスダレを2重につるしているのだが、暑 いものは暑い。 この件に関して、ワシは正直になろうと思うんじゃ。年寄りだから、恥も 外聞もないんじゃ。夏が憎い。夏がなくなって春と秋で分割されればいいと 子供の頃から思っておるんじゃ。 ワシは元気な上に非科学的な人間ということで有名なのじゃ。そこで、一 体全体この暑さどこから沸きだしてきているのか調べることにしたんじゃよ。 仕事部屋でワシが座っているところに、丁度、もわりとした熱気の塊がど こからか降りてきてたまらんので、そいつを除去すれば涼しくなるはずじゃ。 ということで、その塊を追い散らすべく小型のサーキュレーターを買った んじゃ、無印良品じゃぞ。シャレおつなんじゃ。 2重のプロペラが回って、小型の割に風力も強く、買って損はしなかった んじゃが、熱の塊は吹き散らされはしても、次から次へと湧いて来るんで 冷房の切れ目にもわもわと襲いかかってくるんじゃよ。こりゃたまらん。 熱源をたたないと意味がないんじゃなかろうかと賢いワシは考えて、どこ からこの熱が湧いて来るのかを調べることにしたんじゃ。 といっても、この部屋。熱を発生するようなものは、大小小3台のサーキ ュレーターとモニターとパソコンしかない。となれば、熱源はパソコンか窓 から入ってくる外気の熱じゃろ。 調べると熱塊はパソコンのモニターの辺りにただよっておったので、こい つが原因と、サーキュレーターの配置を変えて、モニターを冷やすようにし たのじゃが問題は解決しなかったのじゃ。違う。なにか違う。 熱を追い、乱雑に積み重なった障害物やエロゲのパッケや本を蹴散らして、 熱の沸きだし口が目の前に! 穴があいていおった。 ポカンである。壁に穴が開いていて、そこから熱は吹き出してくるのじゃ。 そりゃ穴が開いてれば、暑さがはいってくる。当然じゃ。アホでも判る。 でもこれはなんなのじゃ? なぜ穴など。 穴を覗くと、向こうにうっそうとした森が見えた。 ひぇ。とワシは踏み台からひっくり返りそうになって懸命に踏ん張り、もう 一度覗いてみたのじゃ。確かに森。うっそうと緑滴りいかにも湿気がありそう な森。キッカイな鳴き声がかすかに聞こえ、なんだか巨大な翼のある生きもの が空を飛んでいるのじゃ。なんじゃこりゃ。穴の向こうは、室外機がぽつんと 置いてあるごくごく普通のベランダのはずなのじゃ。窓からはベランダが見え るのじゃ。つまり、これは、 SF(すこしふしぎ BY 藤子F不二夫) 別の空間に通じているわけなのじゃ。ひゃっほー。向こうにあるのは人跡未 踏の未知の手つかずのすげー広大な土地。あれを分譲して売れば一挙に大金持 ちじゃ。神様ありがとうございます。駄目で間抜けで怠惰で話にならないどう でもいいワシの人生に訪れた一発逆転のチャンス。この穴を広げて、向こうへ 通路を造って、不動産屋でも始めれば……。 待つのじゃ。穴を開けるってことは、この部屋に他人をいれるってことじゃ この汚部屋に。 オタグッズが層や山脈や岩塊となって乱立するこの部屋に。 いかにもロリコン犯罪者の部屋としてマスコミが大喜びしそうなこの部屋に。 …… だめじゃ。それは断じて駄目じゃ。自分ひとりでこっそり掘るしかないのじ ゃ。穴が大きくなれば、向こうの凶悪な生物が入ってくるじゃろ。そうすると 穴の入り口にいるのはワシひとり。まっさきに向こうの生物に襲われて、哀れ 喰い殺される……所詮、ヒーローとか探検家とか成功者にはなれないワシの星 がそういう末路を告げておるのじゃ! そうでなければ政府に土地をあっさり 取り上げられ、涙金で家も追い出され路頭に迷う……どちらがよい末路じゃろ? 殺されるか、首をくくるか……どちらもいやじゃ! と1秒ばかり考えたあげく。ワシは梱包材に入っているぷちぷちを穴につめ たのじゃ。ワシは何も見なかったのじゃ。いや、見たのじゃ。これはネットの 光通信用ケーブルを通すための穴なのじゃ、外にはベランダがあるだけなのじ ゃ。梱包材のぷちぷちを詰めた上から、更に梱包材を2重に張って穴を塞いだ のじゃ。全く人騒がせな穴なのじゃ。 冷房をいれる。おお! 涼しくなったのじゃ。 冷房が効く部屋はいいのじゃ。 平和じゃ。 2014/08/22 過去の更新 2015年 1月 3月 2014年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 8月 9月 10月 11月 12月 2013年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 2012年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 2011年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 2010年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 2009年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 2008年 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 |