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●  丸谷秀人のつぶやき千里・第68回

 久しぶりに郷里に帰った。
 高速を降りると4年前に来た時は駐車場が一杯だったホームセンターが空っぽになっ
ていた。駐車場に車一台なく壁のペンキはあちこち剥がれ閑散としていた。

 諸行無常である。

 いきなり帰ったので両親はひどく驚き、仕事がなくなったのかと早合点。まぁしてる
んだかしてないんだか判りにくい仕事ではあるから万年失業者と見えなくもない。そも
そもライターなんて自称さえすれば誰でもなれる、肝心なのは仕事の依頼があるかない
かで、幸いにしてまだ依頼はある。いつあのホームセンターと同じ運命が来るかは判ら
ないが。

 夕食の席で、あのホームセンター潰れちゃったんだ、と話題を振ると、ここ2,3年
の内に、あそこより値段が安い上に駐車場が大きいホームセンターが三箇所出来て、そ
のあおりを喰らったのだという。きびしいね資本主義は。

 翌日。久しぶりに実家の近所をぶらぶら歩いた。
 相変わらずさびれていた。相変わらずということは良くもならず悪くもならずという
こと。高速道路沿いに十把一絡げ一山百円で転がっていそうなどうでもいい我が郷里に
良くなる要因がひとつもない以上、悪くなっていないだけマシか。それとも、徐々に熱
くなる鍋の中でカエルが慣れてしまって飛び出るチャンスを失うように、悪化の速度が
あまりに遅くて判らないだけで、実はなにもかも駄目になっているのか。

 歩いているうちにずいぶんと来て、あの潰れたホームセンターのさびれた姿が見えて
きたので、そちらに足を向ける。丁度、書いているシナリオの中でホームセンターが出
てくるので背景を発注する時の資料にするために撮っておくか。人が一杯の店内でパチ
パチと撮るのは迷惑な気がするし『エロゲーの背景の資料です』とさわやかな笑顔を浮
かべて許可をもらうのもムリ目だ。つまり資料収集のチャンス。
 やれやれ。そもそもこの季節外れの帰郷は遅遅として進まないその仕事から逃れるた
めだったのに、骨の髄まで仕事に冒されていると苦笑。

 ホームセンターは閉鎖されていたが、広大な敷地の周囲を回れば穴なんていくらでも
見つかるというものだ。実際、5分と歩かないうちに、フェンス際に打ち捨てられた乗
用車の屋根へ登れば、フェンスの向こう側へ簡単に行けるのを発見。さっそくお邪魔。

 広大な駐車場を堂々とつっきって、建物に近づく。

 ぽつりぽつりと廃棄された車が転がる駐車場のアスファルトは、あちこちで裂けて、
下から何だか判らないがたくましい植物がにょきりにょきりと顔を覗かせていた。この
いけてない我が郷里で、ここが再開発されるとも思えないから、10年も経てばここは
草原、30年も経てば雑木林に100年立てば森林に――アンコールワットじゃあるま
いしそれはない。

 ホームセンターの建物は、遠くから見ていた時よりも荒廃はひどかった。ペンキが剥
がれているのは勿論だが、安普請の壁にはひび割れが無数に走り、はめこまれた看板は
早くも錆びだらけ。廃墟のホームセンターに女を連れ込んであれこれするとか、ヤクで
も決めた物騒な奴らをたむろさせ、いや、むさい路上生活者の群れの方がいいか、そこ
へ連れ込まれた女学生がぐへへ――って辱ゲーじゃないんだから、それはない。メモす
るほどのアイデアでもない。そんじょそこらのありきたりだ。

 

 建物の周囲を回る。こういう無駄にでかく管理が行き届いていない廃墟には、絶対に
入れる箇所があるものだ。とか考えながら裏に回ると、半開きになったドアを発見。さ
っそくお邪魔。入った途端に閉まったらいやだなぁ。ホラーなんかでよくあるよね。開
けるには館の主を倒すかアイテムを集めるか謎を解くかしなければ駄目だったりする。
今ではマップを歩き回って手がかりを集めるなんて、エロゲーでは全然はやらないけど。

 明かり取りの窓が広くとられているせいで中は明るいが、ショーケースや陳列用のラ
ックは全て取っ払われ、いさぎいいほどなにもない。これじゃいくら撮っても資料にな
らない。やっぱ辱ゲーだ。ヒロインはここに連れ込まれてヤクを打たれるか恥ずかしい
写真を撮られて肉奴隷に転落していく。やれやれ陳腐。ダウンロード専用ゲーなら一本
道。店頭販売のミドルプライスかフルプライスなら最低でも2コくらいはエンディング
がありそう。ヒロインに妹とか親友がいて巻き込まれるのもそれどこのエロゲというす
さまじい陳腐。

 とか思っていたら、いきなり何かにぶつかった。

 考え事をしながら歩くもんじゃない。人間は考える葦だけど、馬鹿の考え休むに似た
りで、自分はどう考えても休むに似たり。考えていると眠くなってしまうんだ。とか陳
腐なことを考えながら顔をあげると。

 怪獣がいた。
 怪獣は俺の前からホームセンターの高い天井いっぱいまで巨体で埋めていた。

 真っ黒でごつごつした皮膚。端から端までとぐろを巻く尾っぽ。人の背丈ほどもある
牙。背中には板状の突起物が規則正しく並んでいる。戦後何十本も上映された有名な怪
獣。放射能火炎。花と戦ったり、空飛ぶ首がいっぱいある怪物と戦ったり、片目に眼帯
つけた厨2っぽい博士の謎のクスリで骨にされるあの有名な怪獣だ。ホームセンターの
空間に窮屈そうに収まっている。ひぇ。ひぇ。ひぃ。となんとも情けない悲鳴が聞こえ
たので、情けない奴だと嘲笑ったらもちろん自分だった、ちょっとした逃避くらい許し
て欲しい。

 怪獣がもぞり、と動いた。もちあがったのは頭で、黄色く血走った瞳がこちらを、ぎ
ろん、と見た。ひぃ。とまたも情けない声がもれて腰が抜ける。自分が美少女でホーム
センターに連れ込まれていんぐりもんぐりされるのと、怪獣にぱっくり喰われるのと、
どっちがいいだろう、どっちもいやです。

 なんだ、人か、出て行け、喰っちまうぞ。と怪獣は面倒そうに言う。すいません、腰
が抜けて立てないんです。ああ、なるほど、と怪獣はやはり面倒くさそうにうなずき、
ちょっと待ってろ、と言うと、いきなり煙のように消えて、作業着を着たさえない感じ
の中年男が現れたかと思うと、こちらへ近づいて来て手を差し伸べてくれる。立てる?
ええ、まぁ、なんとか。助けを借りて立ち上がる。

 ええと……あれは? そうか錯覚か。あはは。当たり前だ。怪獣なんて今時はやらな
い、いや、はやってるのか? 最近、怪獣が巨大ロボットと戦う映画なんか公開してた
し。中年男は苦笑いを浮かべ、はやっていないさ、最近のはみんなCGって奴だ。俺に
は関係ない。映画関係者なんですか? まぁね。俺は怪獣だからな、昔は映画にも出て
たもんさ。ああ。着ぐるみの中の人だったんですか。中年男は肩をすくめると、いや、
中の人なんていないさ。昔の特撮映画の怪獣はみんなホンモノだったのさ。とあっさり
言う。ホンモノ? ああ。ホンモノさ。あんた見ただろ。俺はホンモノの怪獣。ホンモ
ノの怪獣に一番いい仕事は怪獣を演ずることだったのさ。えーと、それってつまり、特
撮じゃなくてドキュメンタリーってことですか。いや、壊していたのはミニチュアさ、
ホンモノの町を壊すわけにはいかないだろ。そんなことしたら、軍隊とか出てきてやら
れちまう。まぁ、簡単にはやられない自信はあったけどな。そう言った時の中年男の顔
に一瞬誇らしげなものが浮かぶ。

 見たことあります! 特に1作目は傑作でした。そうだろそうだろ。あれは良かった。
ある日突然、映画会社の人間が尋ねて来て、映画に出てくれって言われた時にはびっく
りしたさ。でもまぁ、暴れる時代じゃねぇなって思ってさ。それに生きてくには稼がな
きゃならねぇからな。稼ぐ必要があるんですか? お前、俺のことなんだと思ってるん
だよ。カスミ喰って生きてけるわけじゃないんだよ。もっとも俺も、昔昔はあんたが考
えてるような生活もちょっとはしていたさ。灯台を仲間だと思って襲ってみたりもした
しな。それも映画じゃないんですか? ああ。あれは違うんだ。ドキュメンタリーなん
だよ。そいつを見たこの国の映画会社の人間が俺を捜し出したってわけさ。
 それからはちょっとしたスターさ。映画もヒットしたしな。こう見えても俺は奥ゆか
しいんで、スクリーンで大暴れしてるのが実は俺だなんてことは言わなかったけど、貰
うもんは貰ってたからな。夜になれば銀座に繰り出してバーやスナックをハシゴしたも
んだ。どこが奥ゆかしいんですか。いいじゃねぇか、急にスポットライトを浴びて、少
々舞い上がってたんだからよ。俺以外の何人かも銀幕のスターになったさ。あいつどう
してるかなぁ。あの東京タワーに繭作ったりした奴。機械仕掛けのポンコツには2度と
会いたくねーけどな。

 でも、そんなあなたがなんでこんなとこに。
 お払い箱さ。と中年男は吐き捨てるように呟いた。ホンモノの怪獣を使うより、着ぐ
るみを使う方がいいってな。なんかな、ホンモノの俺が演じてると、過剰に怖いんだそ
うだ。コントロール出来ない感じっつうのか? それが嫌だと。娯楽作品には過剰すぎ
るってな。こう見えてもなぁ色々気は使って、変なポーズしてみたり、媚びちゃったり
もしたんだぜ。でも、なホンモノだから駄目なんだってな。にじみ出しちまうそうだ。
 それからはごく普通に生きてきたさ。怪獣的に普通ってわけじゃないぜ。今更、町を
ぶっこわしてもなんにもなんないからな。知り合いも一杯出来ちまったしな。そんで、
ちょっとした町工場に勤めたり、土木作業員やったりな、見た目通り力あるし、危険な
場所でも滅多に死なないしな。結婚もしたんだぜ。ええっ!? お相手は人間ですか?
当たり前だろ。怪獣なんてな、この星には両手両足の指で数えられる程しかいないんだ
からな。でもよ。いびきがひどすぎるっていう理由で逃げられたよ。

 あはは。と思わず笑ってしまい。相手は痩せても枯れても怪獣だと思って怖くなる。

 安心しろよ。今更、あんたのこと焼いちまおうなんて思わないさ。もう怪獣の時代じ
ゃないのさ。もうな。じゃあなんの時代なんですか。判るわけないだろ。ただ俺の時代
じゃないってことは判っているのさ。そして2度と俺の時代は来ない。だけどな、長年
人間のなりしてるとな、なんかな、さびしくてな。怪獣だってことは忘れちゃいけねぇ
気がしてな。もう一度、怪獣でいたくてな。それで溜めた金をはたいて、ここを買った
のさ。ここなら怪獣の姿でいても気付かれないしな。なにをするわけでもなく、あの格
好でいると落ち着くんだ。俺はやっぱり怪獣なんだなって思うんだ。

 開いたままのドアの場所を教えると、中年男はああ、ここのドアが壊れてやがったの
か教えてくれてありがとよ。と言った。

 これが3年前。

 今年、親戚の不幸で郷里に帰り高速を降りたら、ホームセンターの抜け殻はなくなっ
ていた。跡形もなくキレイさっぱり。ただセイタカアワダチソウに覆われた空き地が広
がっていた。

 あの中年男がどうなったかは知らない。


2013/10/18


● 暑いのやら寒いのやら

どうもこんにちわ、鹿乃シャモアです。
10月に入ってから寒くなった……と思ったら、昼間は暑かったりで
いまだに長袖か半袖かで迷ってしまう今日この頃。
ちなみに開発室内はサーバーやPCの熱で常夏気分です。頑張れ扇風機!

さて、最近のスタッフルームは忙しくてイイコちゃんな内容というか、
ぶっちゃけくそつまんねぇ内容ばっかりだったので(つぶやき千里は除く)、
今回は『私が精液中毒なのはお前のせいだ!』の開発裏話を交えつつ、
やっていきたいと思います。ええ、思うだけですが。

なんつーか、企画の馴れ初めなんか書いても「ふーん」だと思いますので、
んー……そうですね、一番大変だったことでも思い出してみましょうか。

まぁ例に漏れずマスターアップが大変なのは普通に当たり前なのですが、
今回はモロに台風が上陸とぶつかって、実は結構冷や汗モノでしたねー。
当時は「こんなことなら前日に演出調整切り上げておけば!」と思いましたが、
無事リリースできた今となっては、粘って良かったと思います、はい。
むー、当たり障りない感じでこれじゃない感ありありですね。

あー、そうそう、個人的な話になっちゃうんですけど、
結構忙しいタイミングになってから身内に不幸があってアレは本当に参りました。
もう本当にバタバタでパニック状態。メールの転送設定ミスっちゃったりで
正に泣きっ面に蜂。で、そんなこんなで地元に帰ると当然親族が集まってまして、
10年ぶりくらいに会った従姉の子供達、長女(JC)・長男・次女(JS)と会いました。

本来、4親等以上の血縁関係にクリティカル特性持ちの私としましては、
大変喜ばしいことなんですが、残念なことにスポ根系のお父様に似ちゃって、
まぁうん、お察しくださいといいますか、「その歳で顔面ありの格闘技やってるの?」
とか素で聞きたくなっちゃう感じ。ひどい。来世で頑張ろうね。はい頑張ります。

そんである時、葬儀場の控え室でオレと従姪(JC)と叔母(従姪の祖母)がいまして。
その従姪がね、背中を壁につけて、足はM字開脚した状態で座って本読んでたのね。
で、自分はテーブルを挟んで対面にいたからね、やっぱ見ちゃうじゃない。
ね、わかるでしょ? 街灯に集まる蛾花に集まるミツバチの気持ち。
ミツバチもね、レンゲの花だけに集まって花粉を採るわけじゃないんですよ。
そりゃぁ糖度の高い花がいいけど、なかったら糖度の低い花でもしょうがないじゃん?
昔の偉い人も言ったじゃないですか。そこに山(パンツ)があるからだ、って。
だから自分も「しょうがねぇなぁ」といった渋面でね、ちょっと首を捻ってね、
そのM字の丘(花に例えるとめしべ)をチラッと見たわけですよ。

そしたらその瞬間、ちょっと離れたところにいた叔母が口を開いたんですよ。
「○○ちゃん、足、閉じなさい」って。

そんでオレがその叔母さんの方を向くと、ジーっとオレを見てんの。
――背筋が凍ったねオレは。こいつは本当に親族なのかって。
まずオレにロリコンの疑いをかけたこと。さすがにあんまりだと思う。
そしてそのリトマス紙代わりに自分の孫を使ったこと。これは更に許せない。
あの目はね、刑事が長年追いかけてた犯人(ホシ)を見るような目だったね。
目が語ってたよ「コイツは間違いない、クロだ」って。ひどすぎやしませんか?

いやぁまったく失敬な話ですよ、血の繋がった親族をロリコンだと決め付けてさ。
あーあ、大人ってホントにヤだね。あんな大人にはなりたくないと思いましたよ。
でもなんでかねぇ? 実家の部屋にLOを散乱させてたのが良くなかったのかねぇ?
もちろん創刊から買っていたLOコレクションは全て棄てられていました……。
あ、ちなみに従姪はブルマ履いてました。クソァ!

以上をまとめると、『精液中毒』では5等親JCがブルマで残念でした。日本語でOK!

そんな波乱万丈の末に生み出された『私が精液中毒なのはお前のせいだ!』は
全国のショップ様にて好評発売中です!
パッケージ特典として「天~聡莉のとっても気持ちよくなる催眠オナニーCD」
がもれなく付いてお値段なんと、3,200円+消費税! 是非よろしくお願いします!

来週は丸谷先生のつぶやき千里・第68回でーす。お楽しみに!
それではー。


2013/10/11


● 『精液中毒』好評発売中!

『私が精液中毒なのはお前のせいだ!』の発売から1週間が立ちましたが
皆様プレイしていただけましたでしょうか?
まだという方は、全国のショップ様にて好評発売中ですので是非!

そんな『精液中毒』ですが、美少女文庫様発刊、ほんじょう山羊先生による
原作の『お嬢様は僕の××なしにはいられない』も書店様で発売中ですので、
よろしければコチラもチェックしてみてくださいね。

ゲームの方もかなりハードなのですが、実はこれでもオブラートに包んでいて、
原作の方ではさらに過激なお嬢様のアヘりっぷりがご堪能いただけます。
制作時には、原作そのままのテイストでいくかという検討もしたのですが、
ゲームの方は音声がありますので、原作のままだと声優さんの大事な声帯が
どうにかなってしまう恐れが大いにあり、比較的ソフトな表現になっています。
今、「ソフトになってるよね?」と思ってプレイ確認したらメッチャ弾けてたっ!
えーと……「比較的」ということでご理解の程、よろしくお願いいたします……!

先週のスタッフルームでもちょこっとだけ書きましたが、
開発室では次回作へ向けて着々と動き出していたりいなかったり!
近いうちに色々見せできると思いますので、今後もチェックしてみてくだいね!

といったところで今週はこれにて!
それではー!

2013/10/04


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